イングランドでは、街のあちこちにパブがあるのを見かけます。これは都市部に限らず、どんなに小さな町であっても一軒はパブがあり、そのパブが人々の憩いの場であり地元の人々の交流の場になっています。他にお店がないような小さな町のパブでは、郵便局や日用雑貨店も兼ねていたりして、いかにパブがイングランドの人たちにとって大切な存在かがわかるでしょう。そんなパブで提供されているものといえば、ビールです。カウンターごしには各銘柄のビールのコックが並んでいて、注文するとその場でなみなみとついでくれるので、ビール好きにはたまらない光景です。人気の種類は、地域による違いはありますが、やはり地元のビールが根強いようです。
大きく分けて、ビールには「ラガー」と「エール」そしてアイルランドで作られる黒ビールの3つがありますが、日本でよく飲まれているタイプのビールはラガー、それもピルスナーと呼ばれるタイプです。最近ではそのラガーも人気の種類の一つになっているようですが、地元の人たちに昔から愛されているのはやはり「エール」。日本人が好きなように、暑い日によく冷やしてぐぐーっといきたいところですが、どちらかというとそれはラガー向きの楽しみ方。キレがあるラガーに対して、エールはコクがあるので、冷やす温度もぬるめ。それを友人たちと会話しながら、ちびりちびりとやるのが地元の人たちの楽しみ方です。エールの中でも、特に人気の種類は「ロンドンプライド」という銘柄で、「ロンドンの誇り」という名前の通り、地元の醸造所で作られた自慢のビールです。
そして、黒ビールの代表といえば、やはり「ギネス」。アイルランドで作られるこのビールは、黒ビールのシンボルといっても過言ではないでしょう。味が濃厚で、苦味も酸味も強く、アルコールもラガーより高いので、スタウトと呼ばれています。スタウトとは強いという意味で、確かにラガーやエールの比べると、なんとなく強いイメージがあります。イングランドでは、「ギネスに旅をさせてはいけない。」という言われ方があります。つまり、ギネスは長く置いておくと味や香りが落ちてしまうので、なるだけ美味しいうちに味わおうということ。醸造されているアイルランドではもちろんですが、空輸してもたった1時間で届くイングランドでは、どの地方にいっても美味しいギネスが味わえます。
そんな人気のギネスですが、もちろんギネス以外にも黒ビールの銘柄はいろいろあり、アイルランドにいけば、ギネス以外にも「サミュエルスミスオートミールスタウト」や「マーフィ」といった銘柄が愛されています。地域による違いはあれ、皆、地元を愛する気持ちがビールの銘柄選びにも現れているようです。
さて、これほど愛されているビールですが、そのビールに合う料理といったら何でしょう。イングランドのパブでビールを飲んでいる人たちを観察していると、何かの料理を食べながら、という姿をあまり見かけません。ほとんどがピーナツなどのナッツや、ポテトクリスプと呼ばれる日本でいうポテトチップスぐらい。お腹がとてもすいているときなどは、日本でいうフライドポテト(イギリスではチップス)など食べている人はたまにいますが、ビールを飲むときは、ただ本当にビールを楽しむのだということが伝わってきます。といっても、私たちがビールと一緒に何か食べたいときには、ビールに合う料理ももちろんあります。代表的なフィッシュアンドチップスはもちろんですし、鮭の身をほぐしてコロッケのようにまとめて揚げたフィッシュケーキもビールに合う料理です。また、旬の時期の牡蠣や、羊のひき肉で作ったコーニッシュパイは、ギネスにぴったりの料理といえるでしょう。
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