アメリカのビール事情

世界のビール事情

アメリカビール歴史は、地理的・時系列的に2つの流れを持っています。
1つは南アメリカ地域で古くから醸造されて来たビールを源流とするもので、その始まりは紀元前までさかのぼることが出来ます。原料として麦では無く、芋類・豆類が使用されていた事が特徴です。
一方で北アメリカ地域においては、17世紀にヨーロッパからの貿易で伝えられたことが、ビールの歴史の始まりとなります。ヨーロッパから伝わったビールは麦・ホップを使用した現代的なビールに近い、既にある程度完成されたものでした。
そして麦ビールの伝達と共に、南アメリカ地域のビールも麦・ホップを原料とするものに移り変わっていきます。
このようなビール文化の交流は、ヨーロッパからアメリカ大陸への入植が盛んになった時期と重なった事もあり、随所で多くの醸造所が作られるようになって銘柄間の競争が始まり、現在に繋がるアメリカビールの歴史が始まる事となります。

 

budweiser

 

このような歴史的背景と、アメリカ人気質というかアメリカ文化からくる合理性が、アメリカのビール醸造・消費においての特徴になっているかもしれません。
科学的研究成果を積極的に取り入れ、合理的且つ経験の浅い者でも容易に扱えるような醸造設備が主流となり多くの醸造事業者が生まれ、醸造に当たっては「自分達が飲みたいビールを好きに作る」という思考で合理性が貫かれます。
また、ヨーロッパと比較すると歴史が浅い事もあり、ビールに対しての排他的な考えは薄く、結果的に様々な味覚のビールが受け入れられ易く非常に多くの種類が生まれる下地になっているかもしれません。
つまり、アメリカでは地ビール(クラフトビール)の銘柄数・消費量が大変多いという事情が生まれたわけです。

地ビールの消費量は全体の10%弱ですが、日本での地ビール消費量が1%に届くかどうかである事と、国土の広さ・人口の違いまで勘案すると、相当な数量である事が解かります。
アメリカのスーパーマーケットに行ったことがある人はわかるかもしれませんが、非常にたくさんの種類のビールが置いてあります。大手のビールメーカーと地ビールが売り場を分け合って消費者はたくさんの選択肢を持つことができます。

 

americanbeers

 

またアメリカでは伝統的に、ブルーパブという施設が多く存在します。これは地ビール工場にレストランを併設したもので、海外からの旅行者でも気軽に行ける開放的な雰囲気があります。当然ながら工場直送の地ビールを楽しむ事が出来るので、現地のビール好きにとっても美味しいビールを楽しめる施設となっています。
他方、出荷量をランキング化して上位から人気銘柄を見て行くと、日本人にもなじみのバドワイザーなど、大手メーカーが上位を占めます。
バドワイザーに代表されるように、アメリカのビールは他国のものと比較して苦味が弱いという特徴があります。アメリカではビールはスポーツ観戦・映画鑑賞等と共に飲むものとして定着しており、だから手軽にという意味を含めて苦味を抑えて飲み易いビールが好まれるというのが、文化的背景ということかもしれません。

 

ballparkbeer

 

まとめると、人気銘柄は苦味を抑えたビールに集中するものの、その裏には多種多様なビールが共存していて二面性を持っているのがアメリカのビール事情です。
科学的に美味しさを追求し、醸造や消費に対する様々な考え方を幅広く受け入れることから、今後も含めて様々な趣向のビールが登場する地盤があり、またその事がアメリカビールの伝統ともなっています。
そしてアメリカ人は、大手ビールや地ビールをシチュエーションや気分で飲み分けているというのもまた大きな特徴となっています。

 

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